宗教の勝利2020

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信教の自由/憲法に守られた施設の一例[本文内容とは関係ないです]

宗教の勝利/Victory of Religion

 

◆公教育が充実し、人々の精神に合理的科学的知識が伝えられても、

大方は不合理な世界観/宗教を捨てることが出来ない。

客観的に見て明らかに不合理な点を指摘しても、

迷信や神話信仰を捨てない。

また、霊魂や占い、臨死体験に 関心を持ち続ける人が大勢いる。

◆殊に、一神教創造神話や霊魂に対する信仰は

(一部の仏教圏は除き)疑う余地のない常識・当然事として

世界中に伝承されている。

いわゆる妄想である。共同幻想とも言える。

しかし、その妄想のゆえ、この地球上には紛争と不和が絶えない。

信者は信仰により安心立命を得て全能感を持って生きる。

貧老病死に不安をつのらせても、

超越者(神)の思し召しと受け入れ、

あの世での永遠の命を信じて、日々信仰にはげむ。

信者が、そう信じているかぎり、教団組織に瑕疵はない。

この2000年にわたる壮大な詐欺の伽藍のまえに、

合理的な疑問をコトアゲしない信者の知能こそ

教会経営上のたしかな保険である。

 

〇人間精神の未来/自己欺瞞の人類

◆21世紀になっても、人類の大多数は、

その精神性において宗教的蒙昧にとらわれたままである。

合理的科学的な知見が公の教育機関で教えられても、

大多数の生徒学生は、社会人となりながら、

家族地域社会の俗信宗教迷信から離れることができない。

サルトルの「存在と無」における自己欺瞞ほどの厳密さを適応させずとも、

特定の宗教を奉ずる民族・社会は集団の自己欺瞞を抱えている。

 

最近の研究が、また宗教の欺瞞性を追認しているが、

屋上屋をかさねるものの、いまひとつ再確認の補強として、

以下のreport を転載する。[(略)は引用者。]

 

論文紹介:知性と宗教心は逆相関する?

西川伸一  | NPO法人オール・アバウト・サイエンスジャパン代表理事5/20(土)2017

(写真画像略:Catholicの尼僧と握手する Trump 大統領)

トランプ大統領は宗教の政治活動緩和に動いている。(写真:ロイター/アフロ)

フランスの厳格な政教分離

フランスの大統領選挙は我が国でも注目されたが、いつもうらやましく思うのはフランスが続けている完全な政教分離政策だ。これは教育から宗教を完全に排除することから始められたが、一連の動きを推し進めたのがのちに首相になるジュール・フェリー教育相だ。これを実現するためカソリック系の小学校に軍隊を差し向けて教壇にある十字架を外したと読んだことがある。だからこそ、教師が宗教と思想の自由を理由にブルカをまとうのは許されない。

首相や議員が、まだ成熟していない幼稚園児が教育勅語や様々なスローガンを叫んでいるのを見て感激し、宗教政党ですらそれを不思議ともおもわず支持している我が国と比べると、知性の違いを感じざるを得ないが、今日紹介する論文を読んでいて私の感覚の方がこの国ではおかしいのだろうと納得した。

宗教心は知性と反比例することについての論文紹介

この意味でぜひ紹介したいのが、ロンドン・アルスター社会学研究所からの論文で、「Why is intelligence negatively associated with religiousness?(なぜ知性は宗教心と逆相関するのか?)」という衝撃的なタイトルに引き付けられ、専門でもないのに読んでしまった(Dutton and Linden, Evolutionary Psychological Science, DOI 10.1007/s40806-017-0101-0)

ジュール・フェリーが知っていたのかどうかわからないが、おそらく宗教は知性と対立するという強い信念がないと、あそこまで強い政教分離教育政策を取ることはできないだろう。

この論文は、ギリシャのユーリピデスの言葉「誰かが天に神がいると言っているなら、実際は神などいない。古い逸話で語りかけるどんなバカにも騙されてはならない」から始めているが、宗教が知性と対立するという考えはヨーロッパでは根強く続いてきたようだ。さらに1920年以降になると宗教心とIQが反比例するという科学的調査が数多く出版される。

この論文の目的は、なぜこの様な現象が見られるのか考察することだ。

論文と言っても一種の意見で、日系アメリカ人心理学者サトシ・カナザワさんの「サバンナーIQ相互作用説」を少し改変したIntelligence-Mismatch association modelがもっともこの現象を説明できると結論している。

このカナザワ説では、人間がサバンナから離れるとき、以前にはない新しいものを求める知性が進化に直結する形質として確立する。この結果、以前より新しい行動を取ることがIQと相関する様になる。

宗教も最初はIQの高い変わり者の形質として始まるが、これが当たり前になると、IQの高い変わり者は無神論的になるという結論だ(カナザワさんの本は早速購入した)。著者らはこれに基づき、社会も人間もこの集団の中で知性のミスマッチが生じることで多様性を高める方向で進化が進み、その結果として現在宗教心とIQが逆相関していると提案している。

宗教を進化論的に考えるのは当たり前と思っている私にとってはなるほどで終わってしまう論文で、詳しく紹介することは避けるが、この論文で引用されている社会学的調査が面白いのでそれを紹介して終わる。

1) 宗教心とIQを含む様々な方法で測定した知性が逆相関することは多くの調査で示されている。

2) ロシアの様な旧社会主義諸国では無神論者のIQは高く、圧倒的に国民平均レベルを凌駕している。

3) 米国では、原理主義キリスト教信者は一般的に知性が低い。

4) 科学者には宗教信者は少なく、例えば英国科学協会では20年前でもすでに宗教を信じているメンバーは3.3%に過ぎなかった。

5) この傾向に対して、科学を専攻する大学生は人文系の大学生より宗教心が高いことが報告されている。すなわち大学生段階ではIQと宗教心は相関がない。しかし、ポスドクや大学教員になるとこれは逆転し、科学専攻の方が人文系の研究者より宗教心がなく、またIQが高い。

6) 韓国だけはIQと宗教心が相関するが、IQの高い順序は、プロテスタントカソリック、仏教と続く。(韓国は政教分離が明確な国だと思うが、その意味で我が国との比較は面白い様に思う。残念ながら我が国での研究は引用されておらず、調べてみたいところだ。)

7) コンピュータモデルの計算では、民族主義的思想が最終的に多民族主義を凌駕する。

などなどだ。すべてオリジナルな論文があり、ぜひ目を通してみたいと思う。

ただ、この社会学的調査結果を眺めていると、我が国の政府や議会を担う人たちは宗教側に偏っており、フランスでは逆になっていることがわかる。写真に示す様に、トランプ政権は我が国と同じ方向へ向かおうとしている。

科学的に調べれば調べるほど、この民主主義化が抱える問題の出口は見つかりそうもない。

西川伸一NPO法人オール・アバウト・サイエンスジャパン代表理事

 

1948年滋賀県生まれ。1973年京都大学医学部卒業。7年医師として勤めた後1980年ドイツ ケルン大学留学。1987年熊本大学医学部教授、 1993年京都大学大学院医学研究科教授を歴任。 2000年理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター副センター長。2013年、あらゆる公職を辞し、NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン代表理事として様々な患者さん団体と協力して、患者さんがもっと医療の前面で活躍する我が国にしたいと活動を行っている。